区民・事業者・練馬区等がともに地球温暖化防止をめざす

第1期くらしのエネルギー・スキルアップ講座

第7回講座レポート

第一部 講演「人にやさしいスマートなくらし」

一色 正男 氏

第二部 講演「練馬区の地球温暖化対策への取組」

毛塚 久 氏

開催日時:平成28年1月15日(金)10時~12時
開催場所:練馬センタービル 3階会議室

第一部 講演「人にやさしいスマートなくらし」

講師:神奈川工科大学工学 教育研究推進機構 スマートハウス研究センター 所長
一色 正男 氏

1 スマートハウス・HEMSの市場概況

 HEMSとは、「Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)」の略称で、日本オリジナルの言葉です。アメリカでは「スマートホーム」と言いますが、最近は海外でも「スマートハウス」で通じるようになりました。

 最近の新築住宅は、太陽光などの創エネ機器と蓄電池、それにHEMSシステムが標準装備になっています。例えばセキスイハイムさんの「スマートハイム・ナビ」は2015年3月末時点で3万6千戸くらい建っていますが、今後も年間3万軒くらいのペースで建つ予定です。そのようにHEMSが導入されている住宅は、今、積算で50万軒くらいあります。日本の住宅は5000万軒あるといわれるので、まだ約1%に過ぎませんが、着実に増えている状況です。

 これからお話しするECHONET Liteと私の関わりは、2011年7月からになります。ご存じのとおり、その年の3月に震災が起こって電源が不足したため、当時は少しでも省エネになることを始める必要がありました。私は家電メーカーにいたのですが、以前インターネット通信を扱っていた経験があったことで、経済産業省からオファーがあったようです。日本には、全世界にスマートコミュニティを展開する目的で、JSCA(スマートコミュニティ・アライアンス)という、業界の垣根を越えた様々な企業や団体が参加している大変大きな組織があるのですが、そこにスマートハウスに関するタスクフォースを作ることになり、私が座長として就任することになりました。

 スマートハウスは「省エネ」「創エネ」「蓄エネ」を組み合わせたものをいいますが、その3つの要素を適切にコントロールするためには、ICT(情報通信技術)が不可欠です。会議で話し合った結果、私はそれを、ECHONETLiteという通信で行うことを決断することにしました。

2 これまでの検討状況とスマートメーター(Bルート)の位置付け

 先程申し上げた会議では、節電・省エネを進めるために、大きく2つの課題を検討しました。1つ目は、家庭の中にはさまざまな電気自動車、太陽光発電器、蓄電池、家電機器などの“部品”があって、それを連携したら省エネになるけれど、メーカーも業種も異なるものを同じインターフェイス(通信方法)でつながり合うには、共通のプロトコル(言語)が必要となることです。

 2つ目は、接続するスマートメーターやHEMSメーカーの方も数多くあり、さらに電力会社も10社ある中、それらを同じようにつなげることは、思いのほか難しいということです。例えば、電気の周波数が、関東は50Hz、関西は60Hzといまだに違うことでもわかると思います。

 そのため標準となる仕様を揃えるために何回も会議を行いました。海外に飛んで、事例の調査も行いました。その結果を踏まえ、私はHEMSのプログラミングを1つずつ決めていきました。物理的なネットワーク部分は、世界で使われているインターネットのIP アドレスを使用することにしました。サービス部分は、今、みなさんも使われている「アプリ」を使います。そして、「エアコンを20℃に設定する」などという“コマンド”や手順となる“プロトコル”部分はECHONET Lite を標準のインターフェイス規格に使うことを決めました。ここで皆さんに覚えておいていただきたいことは、世界中にこの規格をOPENにしたことです。それは、今までの日本にはないことでした。

 ECHONET Liteは、ISOの標準規格にもなりましたので、インターネットさえ使うことができれば、世界の誰もが自由に利用できます。これにより、例えば日本のメーカーが製造したECHONET Lite対応のエアコンは、輸出した先の海外で、それを使ったサービスが利用できるようになります。OPENにしたことで、私は可能性がどんどん広がっていくと思っています。

 すでに日本では、「電動ブラインドの角度を10度変えましょう」「エアコンの風量を弱めましょう」など、家庭の機器に対し、100種類くらいのコマンドが作られています。ECHONET Lite対応の機器は、普及段階にあり、皆さんは気づいていないかも知れませんが、もう市販のエアコンの7~8割は対応しています。こうしたインフラが整いつつあるのは、今は日本だけですが、あと10年経ったら世界に広まっていくと思います。

 電力メーターは、今、日本中に7,700万個ありますが、低圧用のECHONET Lite対応のスマートメーターに順次切り替えられていく予定です。それにより、電力会社と通信するAルートと同時に、家庭のHEMSとつながるBルートが使えるようになります。さまざまな機器がつながり、アプリによる細かなコマンドが使用できたり、電気の30分値の使用量などがわかるようになります。

3 スマートハウス研究センターの活動紹介

 会議を進めるうちにいろいろな課題が見つかり、その検討をするための研究センターを作ることになりました。神奈川工科大学にスマートハウス研究センターが設置され、私はそのセンター長を務めています。そこには、ECHONET Lite規格がきちんと機器とつながって動くかどうかを確認する設備が作られています。メーカーの社員が、新しい車や電池を持ち込んで試したりしています。また、新規参入事業者のための開発支援キットを作ったり、HEMSや接続機器を安全に運用するルールやガイドライン策定の支援などもしています。

 今、センターでは、「IOT(Internet of things)」あるいは「IOH(Internet of human)」スペースを作り、機器と情報がつながった後に、人や暮らしに対してどのようなことができるのかを考えています。例えば、離れた家に住む一人暮らしのおばあさんの生活を、ネットで見守るサービスが可能になるか?などを試したりしています。そうした“ゆるいつながり”による相互のコミュニケーションは、“情報化”は得意な分野なのです。

 「スマートハウス」は“住まう人のハウス”でもあると私は思っています。インフラの整備とともに、これからも世界の人々と協力し合って、人や暮らしにやさしく寄り添うサービスを考えていきたいと思っています。

質疑応答

Q:ECHONET Lite規格は世界標準にもなっているというが、セキュリティ面はどうなっているか。

A:ECHONET Liteの規格そのものに少しセキュリティがありますが、実際はインターネットプロトコルを使うので、家では、「IDとパスワード」などのような一般的なインターネットのセキュリティを使うことになります。

配付資料等

第二部 講演「練馬区の地球温暖化対策への取組」

講師:練馬区環境部環境課長 毛塚 久 氏

1 練馬区の概要について

 本日は、区の環境事業や温暖化対策、エネルギーに関する話をさせていただきます。

 まずは練馬区の面積ですが、実は平成23年度に測量しなおしたところ、東京23区の面積が変わったと国土地理院から発表があり、48.08km2が最新の数値です。人口は、年間2,000~3,000人ずつ増加しており、間もなく72万人になります。一人当たりの公園面積は2.88m2ですが、30年くらい前は「1」を切る状況でした。緑被率は25.4%で、これは最新の調査では、23区で一番多くなっています。

 練馬区は平成18年8月1日に「環境都市練馬区宣言」を宣言しています。条例も宣言も同様に、区議会で議決をいただいて発表するものですが、「条例」は行政や区民のみなさまが守っていかなくてはならないこと、「宣言」は、「練馬区はこういう風に考えています、こういう姿勢で仕事をしていきます」といったことを明らかにするものです。練馬区は、ほかに「非核都市練馬区宣言」「交通安全都市練馬区宣言」「健康都市練馬区宣言」という3つの都市宣言をしています。

2 練馬区の環境事業について

 練馬区は、6月の環境月間に「月間行事」を行っており、昨年はねり☆エコの主催で「スタート!エコライフ2015」を庁舎のアトリウムで開催しました。ちなみに、1972年6月5日にストックホルムで「国連人間環境会議」が行われたことから日本の提唱により、6月5日は「世界環境デー」、6月が環境月間と定まりました。

 毎年10月には、練馬区民環境行動連絡会と一緒にエコライフチェック事業を行っています。事業は平成17年度から始まりましたが、次第に参加人数が増えており、平成26年度までで延べ241,406人が参加しています。エコライフチェックでは、普段の日とエコライフデ―にシートに書かれた行動についてチェックし、その差から二酸化炭素の削減排出量を算出します。平成26年度は1日で約4,280kg削減できたことになり、これは体積にすると25mプール4杯分の削減量になります。練馬の温暖化対策につながる事業ですので、今後もぜひ多くの方に参加いただきたいと思います。

 毎年7月から8月には、ヒートアイランド対策として「ねりま打ち水大作戦」を商店街や図書館、保育園などで行っています。資料にあるキャラクターは「ニジー」で、風呂の残り湯などの“二次利用水”を使って欲しいということをPRしています。いつどこで打ち水を行うかを示した「打ち水カレンダー」をホームページに掲載したり、使用する道具を貸し出したりしてします。打ち水をまくと表面温度が2~3℃くらい下がって涼しさを実感できます。お子さんも気軽に参加できて、環境のことを知っていただくのに効果的なイベントだと思っています。

 昭和49年度からは、小・中学生を対象に「環境作文コンクール」を実施しています。審査は、小中学校の教職員から選ばれた環境学習の協議会の先生にお願いしています。今年度は、小学生部門は302点、中学生部門は562点の応募があり、16名の方の作品が入賞しました。

 次はごみの話です。「練馬区資源・ごみの分け方と出し方」という冊子をご家庭に配らせていただいていますが、練馬のごみの年度別の総排出量、年間の一人当たりの排出量は一貫して減ってきています。そして、平成24年度は一人当たりの1日のごみの排出量も23区中で一番少なかったのですが、26年度に練馬は508.3g、杉並は498.3gと一位の杉並区とは10gの差となっています。区民の皆さまはすでによく分別をされていますが、さらにお願いするとしたら、生ごみを出すときには一絞りして、水切りして欲しいということです。それでごみは相当軽くなるそうです。また可燃ごみに資源である紙が混ざっていることもあり、改めて分別をお願いします。

 次は、みどりのお話です。今、練馬では、「みどりの豊かさを感じられる街にするには?」ということを検討しています。現在までの事業では、万年塀の生け垣化や屋上の緑化に助成をしています。また「みどりのカーテンプロジェクト」として、ここ2年は、区民の方からみどりのカーテンのお写真をいただいてコンテストも実施しています。震災後は、夏の節電が課題になったこともあり、始める方が増えました。4月には種をご提供しています。「照姫まつり」の時には、みどり推進課のブースでご紹介していますので、ぜひいらしてください。

 また、練馬みどりの葉っぴい基金の「ぴいちゃんファンクラブ」は、2年間で2,500円払って会員になっていただき、代わりに園芸用品などが購入できる3,000円分の商品券を差し上げる制度です。

 エネルギー関連では、住宅に太陽光発電や燃料電池システムなどを平成27年11月1日から今年1月31日までの間に設置した方は、2月中までに申請していただければ、抽選で補助金をお出ししています。該当される方はぜひご利用ください。

3 「練馬区エネルギービジョン」について

 最後に、「練馬区エネルギービジョン」の素案についてご紹介させていただきます。1月20日まで、区民の皆さまからご意見を募集しています。

 素案は、大きな柱立てとして「災害時のエネルギーセキュリティの確保」「分散型エネルギーの普及拡大」「省エネルギー化の推進」「区民とともに進める取組」の4つから成っています。

 まず「災害時のエネルギーセキュリティの確保」は、今までは国の政策として扱われ、エネルギー事業者さんが主にやっていたことですが、震災などの災害時に避難拠点や皆さまのご家庭でのエネルギーをどう確保していくかを、自治体としても取り組んでいくべきだと示しました。すでに避難拠点となっている区立小中学校には、小型発電機を準備し、災害時に一定程度の電気は確保されていますが、それを補うために「災害時協力登録車制度」を創設し、プラグインハイブリッド車や電気自動車などを非常用電源として使用していきたいと思っています。また今後、小中学校に太陽光発電を導入する際は、蓄電池と合わせて設置することで夜間の電気も確保できるようにしていきます。

 「分散型エネルギーの普及拡大」では、家庭で複数の再生可能エネルギー機器を導入する場合、現在は1 世帯1設備しか補助が出ませんが、来年度からは、複数の申請も受けられるように補助を拡充させます。

 「省エネルギー化の推進」には、引き続きしっかり取り組んでいきます。

 最後の「区民とともに進める取組」は、今までご説明したような施策は、区民の皆さまが一緒に取り組んではじめて広がっていくものと、あえて挙げさせていただいたものです。資料に平成40年頃のイメージ図を掲載しておりますが、さまざまなエネルギーに関するインフラを整えていくことと同時に、区民や事業者の皆さまの主体的な行動が伴っていることが何よりも重要だということを示しています。区は、それを目指して取り組んでいきますので、皆さま、ご協力をよろしくお願いいたします。

質疑応答

Q:「みどりのカーテンプロジェクト」は大変良い事業だと思う。これからも続けるのか?

A:来年度(平成28年度)もやる予定です。

配付資料等

参加者アンケートより

第一部

  • スマートハウス化する為の機器などの整備が、ここまで進んでいることを初めて知りました。今後、より効果的な使い方をより研究され、有効なシステムとなることを期待しています。
  • 未来の生活にとても役に立つお話しでした。既存の住宅に追加でスマートハウスに出来る事が分かりましたが、一般的には余り知られていないのではと思いました。
  • むずかしいお話でしたが、画面とわかりやすい説明で大体は理解できました。日本はすごいと思いました。将来、ロボットに介護されたいです。

第二部

  • 区報等で掲載されたりするが、環境に取組む姿勢が講義を受けて理解出来ました。
  • 練馬区を皆で育てたい。
  • 区民として知らない部分がありました。全てのエコに意識を持って生活したいと感じております。
  • 第一部との関連もあって、少しずつ環境問題が見えてきた。