地球温暖化防止月間講演会「宇宙からのメッセージ 大きな夢と美しい地球を!」

概要




松原 彰士(しょうじ)講師

 毎年恒例となった12月の「地球温暖化防止月間講演会」、今年のテーマは「宇宙」です。地球温暖化は、練馬だけではなく地球全体の問題です。その地球を、宇宙から眺めたらどうなっているのでしょう? 長年、宇宙に携わってこられた松原彰士氏を講師にお迎えし、宇宙から見た地球の現状についてお伺いしました。

 松原講師は上智大学物理学科を卒業後、スタンフォード大学大学院を修了。宇宙開発事業団(NASDA)を経てJAXAに勤務する宇宙のエキスパートです。ロケット機体の開発や宇宙実験に立ち合い、ヒューストン駐在事務所長などを歴任され、現在は第一宇宙技術部門衛星利用運用センターに所属。衛星の防災利用に尽力されています。

 宇宙の専門家のお話が聞けるとあり、当日12月6日(日)、練馬区役所アトリウム地下多目的会議室には、幅広い年齢層の方々が集まりました。

 会場では平成27年度「こどもエコ・コンクール」の入賞作品のパネル展示も実施。同コンクールの最優秀作品の絵はがきや、ねり☆エコのオリジナルクリアファイルなども無料配布されました。


主催者あいさつ


横倉 尚 会長

 講演に先立ち、ねり☆エコの横倉尚会長がご挨拶を行いました。

 「このところ、JAXAのはやぶさ2が大きな話題になっています。宇宙の話が日常的に報道されるということは、私の子どもの頃には考えられないことでした。宇宙の問題が、地球温暖化と同様、より身近に感じられる時代になってきたのだと思います。
 他方で、地球温暖化問題は100〜200年という長いスパンで取り組んでいかなくてはなりません。特に、未来を担う若者たちには宇宙や地球温暖化について関心を持ち、身近な問題として考えていただきたい。そのような気持ちで宇宙というテーマを選び、JAXAの松原先生に講師をお願いしました。どうぞお聞きください」


講演「宇宙からのメッセージ 大きな夢と美しい地球を!」

第一部 宇宙開発について





「仕事柄どうしても難しい話になってしまいますが、子どもたちにできるだけ優しくお話しようと思います」という言葉から、講演がスタートしました。

 第一部のテーマは「宇宙開発について」。ロケットはなぜ飛ぶのか、そのスピードはどれくらい速いのか、という基礎的なお話から始まり、今話題のはやぶさ2の小惑星探査の活動について、宇宙ステーションについて、と話題が広がります。宇宙ステーションに物資を運ぶ補給機「こうのとり」の迫力ある打ち上げ動画も紹介されました。

 無重力ってなんだろう? 無重力だとどうなるの? なぜ宇宙ステーションは地球をまわれるの? といった宇宙についての素朴な疑問コーナーや、日本人宇宙飛行士の方々の人柄に触れる知られざるエピソードなどもお話いただきました。

 また、簡単な実験もいくつか行われました。
 まず無重力状態を確認する実験です。ペットボトルに水を満杯近くまで入れ、静かに上へ水平に投げると、無重力状態(空中で水の中の泡がボトルの真ん中に浮かぶ状態)が確認できるのです。自宅でもできる簡単な実験方法に、参加者の皆さんは興味津々。

 そして休憩時間を利用し、バケツや洗面器の水を両側から割り箸でつつき、波がどう重なるかを観察しました。ロケットのお話や打ち上げの映像で、宇宙空間が少し身近に感じられるようになったようで、子どもたちは大きな歓声をあげて、楽しそうに実験を行っていました。

第二部 宇宙からの地球観測と地球温暖化の現状

ハニカム構造 ©JAXA

断熱材 ©JAXA

温室効果ガス観測衛星「いぶき」©JAXA



 第二部では「宇宙からの地球観測と地球温暖化の現状」と題し、地球温暖化について探ります。その前に、参加者には人工衛星やロケットの構造の一部を知るための見本が回覧されました。

 一つは、機体を軽く、強くするために、ハチの巣状の心材を挟んだ「ハニカム構造」の見本。

 もう一つは衛星内部の温度を外の環境に影響されず、適切に保つための金色の断熱材の見本。強い放射線や紫外線などに長時間耐えることができ、太陽光などから受ける熱を90%以上もさえぎることができる、人工衛星の周りに貼りつける素材を実際に手に取ってみました。

「地球温暖化に対して、宇宙から何ができるかというと、まずしっかり観測すること」と語る松原講師。そこで二酸化炭素やメタンの濃度を観測する、温室効果ガス観測衛星「いぶき」が紹介されました。「いぶき」はJAXA、環境省、国立環境研究所が共同開発した世界初の温室効果ガス観測専用の衛星です。「いぶき」の構造、データの解析方法、実際の観測結果などをお話しいただきました。

「いぶき」のほかにも、私たちの生活を見守り、役立てるための観測を行う人工衛星があり、「ひまわり8号」は気象、「しずく」は海面や水蒸気量など水に関すること、「だいち2号」は陸地の観測を通じた自然災害の状況把握などを行っています。様々な衛星が、様々な角度から観測をすることで、地球の現在の状況や温暖化の現状が正確に見えてくるのです。宇宙での観測と地球温暖化問題は切り離せないのだということが、とても実感できました。

 最後は、事前に参加者から寄せられた質問に、丁寧に答えてくださった松原講師。

「宇宙はどこまでありますか?」という子どもらしい質問には、「まさに私たちが考えている問題です。私たちにはまだ、宇宙の一部しか見えていません。ぜひ、自分で考えてみてください」と答え、子どもたちに大きな夢を託します。

 さらに「このまま温暖化が進んだら、日本、練馬はどうなるの?」という問いには、「みんなが歩調をあわせて、限りある資源をより有効に利用するために一生懸命やりましょう!」と呼びかけます。

「宇宙飛行士になるためにはどうしたらいいの?」との問いかけには「狭いロケットの中で長時間、一緒に力を合わせてチームで行動するので、仲間と仲良くできることが大切なんだよ」と優しく教えてくださりました。

 宇宙から見た地球には、私たちの日々の生活や地球温暖化防止のための沢山のメッセージが詰まっているのだと知った講演会。子どもたちが将来、そのメッセージを受け取り、どんな夢を紡いでくれるのかが楽しみです。


参加者コメント

・映像やビデオなどが多く、わかりやすく楽しかった。
・JAXAは宇宙開発だけでなく地球環境を守るために活躍されていることがよく分かった。測定が地球環境に具体的にどう貢献しているか分かった。
・子ども達にも解るように平易な言葉でとても親切、丁寧に分かりやすく話されていた。
・ロケットの仕組みや、小惑星探査や宇宙ステーションについて良く理解できた、とても楽しかった。
・資料(広い研究の成果)、進行が大変良かった。
・素晴らしかった。大人も楽しめる内容。
・講師の先生の指導に対するお気持ちが伝わってきた。
・天気予報が正確になってきたわけが納得できた。

 最後に松原講師をはじめ、ご参加いただいた皆さま、関係各位に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。